HubSpotの再設計。見直すべきサインと進め方
HubSpotを導入して半年、1年と経つうちに、「なんとなく使いにくくなってきた」と感じることはないでしょうか。
これは導入が失敗だったということではありません。組織の体制が変わったり、事業の方向性が変わったりすれば、導入時の設計と実際の運用がずれてくるのはむしろ自然なことです。ただ、そのずれを放置していると、HubSpotが「データを入れる場所」から「誰も触りたくないシステム」に変わってしまうリスクがあります。
この記事では、再設計が必要なサインの見分け方と、実際にどう進めるかを整理しました。
再設計が必要なサイン
以下のような症状が出ていたら、再設計を検討するタイミングかもしれません。すべてに当てはまる必要はありませんが、2つ以上該当するなら全体的な見直しを考えたほうがよいでしょう。
1. プロパティーが増えすぎて全体を把握できない
権限設定をしていない環境だと、担当者がそれぞれ必要なプロパティーを自由に作れてしまいます。展示会やキャンペーンのたびに新しいプロパティーが増え、気づけば似たようなものが何十個もある——という状態は珍しくありません。
こうなると「どのプロパティーに何のデータが入っているか」を把握できる人がいなくなり、レポートやワークフローの信頼性にも影響が出ます。
プロパティーの基本知識も合わせて参照してください。
2. ワークフローが動いているのかわからない
プロパティーが乱立すると、それに合わせてワークフローも増えていきます。辻褄を合わせるために複雑なワークフローが組まれ、さらにその修正のために別のワークフローが追加される——という悪循環が起きがちです。
結果的に「このワークフロー、止めても大丈夫なのかわからない」という状態になり、誰も手をつけられなくなります。
ワークフローの基本知識で基本的な設計の考え方を確認できます。
3. ダッシュボードを誰も見ていない
導入時に作ったダッシュボードが、半年後にはまったく使われていない。これもよくある話です。
原因はいくつかありますが、多いのは「レポートに表示されるデータが信頼できない」ケースです。入力ルールが統一されていない、プロパティーの使い方が担当者ごとに違う、といった問題があると、ダッシュボードに表示される数字の意味がわからなくなります。そうなると自然に誰も見なくなります。
4. 担当者が変わるたびに「わからない」が発生する
HubSpotの設定や運用を特定の一人に任せていると、その人が異動や退職をしたタイミングで「この設定は何のためにあるのか」「このワークフローは止めていいのか」がわからなくなります。
引き継ぎのたびに設定の意図が少しずつ失われていき、気づいたころには全体像を理解できる人がいないという状態になりやすいです。
5. 導入時の目的と今の業務がずれている
導入当初はマーケティング部門のメール配信が主目的だったのに、途中から営業チームも使い始めた。あるいは、最初はリード管理だけだったのが、カスタマーサクセスの管理まで範囲が広がった。
こうした変化自体は事業の成長の証であり、悪いことではありません。ただ、目的が変わったのに設計がそのままだと、ツールと業務の間にずれが生じ続けます。
再設計の進め方
サインに心当たりがあるなら、次は「どこから手をつけるか」です。一気に全部を直そうとすると混乱するので、ステップを分けて進めることをおすすめします。
現状把握
プロパティー・ワークフロー・ダッシュボードの棚卸し
ゴール再定義
今の業務に合わせた活用ゴールを再設定
データ整理
クレンジング・重複マージ・プロパティー見直し
ワークフロー再構築
不要なWFの整理と新しい自動化の設計
レポート・ダッシュボード
KPIに基づくレポートの再構築
運用ルールと定着
入力ルール策定・トレーニング・定期レビュー
現状把握 ─ まず棚卸しから
再設計の第一歩は、今のHubSpotの状態を把握することです。
確認すべき観点は以下の通りです。
- カスタムプロパティーの数と、実際に使われているものの割合
- ワークフローの数と、稼働中 / 停止中の内訳
- ダッシュボードの数と、最後に閲覧された時期
- ユーザー権限の設定状況
- 外部ツールとの連携(インテグレーション)の稼働状態
この段階では「何を直すか」ではなく「何が起きているか」を正確に把握することが目的です。
ゴール再定義 ─「元に戻す」ではなく「今に合わせる」
棚卸しの結果をもとに、HubSpotの活用ゴールを再定義します。
ここで大事なのは、「導入時の設計に戻す」ことを目指さないことです。導入時と今では組織も業務も変わっているはずなので、目指すべきは「今の業務に合った設計」です。
- 今、HubSpotで何を管理したいのか
- 誰が、どの業務で使うのか
- どの数字をKPIとして追いたいのか
これらを関係者で共有し、改善の優先順位を決めます。課題が曖昧なまま作業に入ると、後から「思っていたのと違う」となりかねません。
データ整理 ─ クレンジングとプロパティーの見直し
ゴールが決まったら、データの整理に取りかかります。
- 不要データの除外:長期間未接触のコンタクトや、明らかに不要な企業レコードの削除
- 重複データの統合:メールアドレスやドメインをキーにした重複マージ
- プロパティーの整理:使われていないカスタムプロパティーの削除、必要なものの追加
設定変更やデータ削除の前に、必ずエクスポートしてバックアップを取っておきましょう。
重複データのマージについて一つ注意点があります。数が多いとマージ作業自体を外注したくなると思いますが、「A社とA'社、どちらをマスターにするか」という判断は必ず事業側で行ってください。外注にはマージの実作業だけを任せ、判断は社内で持つ。これを怠ると、後から「なぜこちらが残ったのか」がわからなくなります。
プロパティーの基本知識も参考にしてください。
ワークフロー再構築 ─ テストなしの変更は危険
データとプロパティーが整理できたら、ワークフローの見直しに移ります。
- 現在稼働中のワークフローを一覧化し、目的と動作を確認
- 不要なワークフローを停止・削除
- 必要な新しいワークフローを設計・実装
ワークフローの変更は、テスト環境または限定的なデータで必ず試験運用してから本番に適用してください。
たとえばライフサイクルステージを再設計する場合、一度すべてのコンタクトをリセットしてからワークフローで振り分け直す手順を踏むことがあります。このとき条件に漏れがあると、本来SQLとして営業がアクションすべきコンタクトがリードのまま止まっている——ということが起きます。社内のデータだけの話ならまだ修正が効きますが、これがメール配信のトリガーまで連動していたら影響範囲が一気に広がります。テストは必ず行いましょう。
ライフサイクルステージの設計プロセスとワークフローの基本知識も合わせて確認してください。
レポート・ダッシュボードの整備
データとワークフローが整った段階で、レポートとダッシュボードを再構築します。
進め方としては、まず「何を見たいか」を関係者とすり合わせ、ダッシュボードを一旦完成させる。その後、実際の運用の中で「このデータを別の角度から見られないか」という微調整を加えていく——という順番がうまくいきやすいです。
最初から完璧なダッシュボードを作ろうとすると、要件のすり合わせだけで時間がかかりすぎます。大枠を先に決めて、改善は運用しながら回す方が現実的です。
運用ルールと定着
再設計したあとに最も大事なのは、新しいルールを組織に定着させることです。
- 入力ルールの策定:プロパティーの入力規則、取引作成のフロー等をドキュメント化する
- トレーニングの実施:変更点を関係者に研修する。汎用的な機能知識はHubSpotアカデミーの活用も有効
- 定期レビュー:月次や四半期で運用状況を振り返り、ルールの見直しを行う
せっかく再設計しても、ルールが共有されなければまた同じ状態に戻ってしまいます。継続的にレビューすることで、定着率は確実に上がります。
自社で進めるか、外部に頼むか
再設計を誰が主導するかは、組織の状況次第です。
自社で進められるケース:
- 社内にHubSpotの設定経験がある担当者がいる
- 課題がプロパティー整理やダッシュボードなど、特定の領域に限定されている
外部の支援を検討すべきケース:
- HubSpotの全体像を把握できる人が社内にいない
- プロパティー、ワークフロー、インテグレーションが複雑に絡み合っている
- 担当者の変更が重なり、設定の経緯を知る人がいない
どちらを選ぶにしても、最終的なゴールは「自社で運用を回せる状態」にすることです。外部に頼む場合も、設定の意図やルールが社内に残る形を意識してください。
soma24では、HubSpotの再設計・運用改善のご相談を承っています。お気軽にご相談ください。
再設計は、過去の失敗を清算する作業ではありません。組織が変わり、業務が変わったことに合わせて、ツールの使い方をアップデートする自然なプロセスです。
この記事が、HubSpotの運用を見直すきっかけになれば幸いです。
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執筆者
西岡 草実(Soma Nishioka)
HubSpot Solutions Provider
アユダンテ株式会社でSEO/コンテンツ制作、株式会社100でHubSpotコンサルタントを経験。現在はsoma24として、企業規模を問わずHubSpotの成果最大化を支援しています。
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